はじめに
(一社)沖縄オープンラボラトリ では2021年11月に、「沖縄の交通を見える、使えるへ!Okinawa Open Data Challenge 2021」と題し、ワークショップを開催しました。
本ワークショップでは、OOLが保持、運営している交通系、観光系のオープンデータ(OTTOP)とその他関連するオープンデータを活用し沖縄県の公共交通及び観光に関連する課題を見える化しようというイベントです。
参加者自身で可視化に取り組むだけでなく、関連する講演、アドバイザーと参加者を交えた意見交換/共有も行われました。
イベントコンセプト→ "見える"、"使える"へ
"データ"が流行る中で、意外と自らの手で触ったことがない肌感でデータの良さ、可能性を実感する。
交通オープンデータを始め、流通しているオープンデータなどを組み合わせ、"感覚"とは違いデータから「見える」ことを通し、現状把握や分析につなげる。

開催概要
主催: 一般社団法人 沖縄オープンラボラトリ(OOL)
参加者: 自治体・公共団体職員、建設コンサルタント、ITエンジニア、経路検索サービス事業者、大学生など
特別アドバイザー:
伊藤 昌穀氏(東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 准教授)
福島 健一郎氏(コード・フォー・カナザワ 代表理事)
総合進行:石垣 綾音氏(まちづくりファシリテーター)
協賛:株式会社オリエンタルコンサルタンツ、株式会社エクトラ
プレイベント
日時: 2021年11月6日(土) 13:30〜17:00
場所: 宜野湾ベイサイド情報センター
参加人数: 15名
メインイベント
日時: 2021年11月18日(木)9:00〜17:00
日時: 2021年11月19日(金)9:00〜17:00
場所: 沖縄コンベンションセンター
参加人数: 16名
ResorTech EXPO 2021 in Okinawa の一環として実施
イベント関連記事
・東京大学 伊藤昌毅准教授ブログ
・沖縄タイムス記事
イベントの様子
本イベントでは特別アドバイザーとして、東京大学大学院情報理工学系研究科の伊藤昌毅先生、コード・フォー・カナザワの福島健一郎さんを迎え、大学生や自治体職員、交通・観光事業者、IT事業者の方々など様々な業種の方々にご参加いただきました。
イベントで行ったのは主に以下の3つ。
1. 目的・仮説を立てる。
2. もくもくと手を動かして体験(挑戦)する。
3. "ざわざわ"する会。みんなで出来上がったデータを共有する。
参加者はデータに関する講演の聴講、グループ毎のアイデア出し、実際にツールを使っての可視化作業を行い、ワークショップを通してオープンデータと関連するデータの扱い方を実践しました。
プレイベント
1. 基調講演/伊藤 昌穀氏(東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 准教授)
2. イベント概要説明
3. OTTOP概要説明
4. ワークショップ(アイデア出し)
まず、基調講演として東京大学の伊藤 昌毅先生にご講演いただきました。問題解決のためにデータ分析による現状把握が有効と指摘し、地図に落とし込んだ路線バス本数と人口密度を示しながら「ただの無味乾燥な個々のデータも組み合わせることによって仮説やアイデアが生まれる」との話がありました。参加者はデータから意味づけ、推論を行うというデータの扱い方について学びました。


その後、参加者は各自でテーマを考え、「学生」「生活」「観光」という3つのテーマに分かれてディスカッションを進め、データを使って何を知りたいか、何をやりたいか、どうすれば交通が使いやすくなるのかなど、それぞれ課題を可視化するために必要な情報について話し合いました。特別アドバイザーの伊藤先生、福島さんから「公共交通と自家用車を組み合わせたバランスの良い交通の姿を考えてもらいたい。今後の交通を作るために非常に重要なプロジェクトだと思うので頑張って欲しい」とコメントをいただきこの日を締め括りました。





本番ワークショップ
1日目
1. プログラム説明
2. プロジェクト共有
3. データの可視化プロジェクト作業
4. 中間発表
2日目
1. データの可視化プロジェクト作業つづき(データから見えてきたものを分析 etc.)
2. プロジェクト結果共有
3. 持続可能な公共交通に向けてー振り返り(ざわざわ会)
4. まとめ、講評
本番ワークショプでは、プレイベントに引き続き、アドバイザーらのサポートを受けながら、各チームに分かれアイデア出しや可視化ツールを利用した作業を行いました。
それぞれがQGISのダウンロードから始まるチームや、ツールへの落とし込みとデータ収集と役割り分担をして取り掛かるチームなど各チームごとに違った取り組み方が見られました。





成果発表
1.5日間のグループワーク後の成果発表では、主に下記の内容をデータとともに各チームに発表していただきました。
集めたデータ
得たインフォメーション
得たインテリジェンス
課題・提案
① 学生視点チーム:「琉球大学周辺にどのくらいバスが通っているのか」
琉球大学周辺の公共交通の可視化。いくつかの仮説を基に、GoogleMapsによる経路探索に始まり、QGISを用いた国勢調査、路線バスデータを組み合わせ、地域毎のアクセスの差の見える化に取り組みました。場合によっては徒歩がはやい!といったことなどがデータにより見えてきました。
琉球大学は駐車場有料化などが検討されており、自家用車通学を抑制するだけはなく、交通事業者を巻き込んだ取り組みが必要なのでは?ということが考察されました。
首里から琉大に通う事ができる
沖縄市や北谷町からは乗り換えが必要
名護市からは高速バス直通だが時間とコストがかかる
琉大からバスで移動すると、近い西原シティよりライカムの方が行きやすい
② 生活視点チーム:「パーク&ライドは本当にいいの?」
公共交通と自家用車のバランスのいい利用はなにか可視化。Adobe XDによるサービスイメージを共有しつつ、Kepler.glによる見せ方にこだわり取り組みました。
テーマに対して、駐車場データの収集に苦戦しつつ、WEBスクレイピング、各サービスAPI、Excel、Javascriptによるデータ処理と技術を駆使し、"見える化"に挑みました。
公共交通を使う前提で考えた駐車場であればパーク&ライドで有効活用できると考えられる。(例:てだこ浦西)
車が便利なため、渋滞が減らない
駐車場料金のことを考えると車を使うよりも公共交通の方がトータルで安いと考えていたが、出先(宜野湾➡県庁)での滞在時間(3時間)によっては、公共交通よりも車の方が安く済む場合がある。
③ 観光視点チーム:「バスで帰れるならローカルな飲み屋や街に行きたい!」 「飲み屋」に行き、帰るという交通利用シーンを明確化しデータと向き合いました。
どのようなサービスにするかの議論に始まり、PRサイトへの組み込みなど色々な案が出た中、「沖縄飲み屋街 終バスマップ」を出力。
時間の変化とともに変わる、帰宅できる範囲を目の当たりにしながら現状でもレンタカーなしで楽しめる「昼夜のモデルコースPR」もできるのではないか等意見が出ていました。
地点、時間毎の到達圏からの考察
宿泊施設が少ない地域でも、レンタカーなしで楽しめる昼〜夜のモデルコースを設定することでPRに繋げられるかも
路線沿線の飲食店・ホテルでも使えそう
また、発表した内容について再度全員でデータを見ながら意見交換を行い、新たな課題や可能性を発見したりと理解を深めました。



ワークショップ総評
伊藤先生コメント:
「データそのものだとよく分からなくても、自分の生活を考えながら読み解いていくと地域や生活に関わるいろんな情報が出てくる。コロナ禍で公共交通や移動に大きな制限があった中で、我々がもっと自由に移動できる時代がまたくる。その時に、車も良いがそれ以外の他の選択肢も持ちながら、より豊かな移動ができる社会ができれば良いなと思う。データによって多様になり豊かになりいろんな意味を噛み締められる経験や思いを共有できる仲間を増やしていければと思う。」
福島さんコメント:
「普段石川県でシビックテックの活動の中で様々なデータを活用してコミュニティを作って課題解決をしている。その際に必要であればアプリを作ったり行政と連携したりしている。公共交通に特化してデータを活用して知見を得る体験を通して、私自身も刺激をもらって勉強になった。石川県は現在公共交通に関するオープンな形でデータがあまり出ていない。社会課題の解決に取り組んでいる仲間はたくさんいるが、公共交通の部分は遅れている実感がある。2日間の経験を通して、石川県の公共交通のオープン化に活かせていければと逆に持ちかえらせていただきたいと思う。」
参加者コメント:
「課題解決に対し最短距離でできることを考えがちだが、データを見ながらいろんな可能性を探っていく作業、その為にいろんなデータを重ねたり、見方をすることによって可能性が見つけられるというところが、名前の通りオープンであり、チャレンジだったと思う。」(観光団体職員)
「自分でデータを直接可視化して分析する作業の経験、仮説・検証サイクルの実体験ができて良かった」(学生)
「経路検索好きがこんなにいるとは思わなかった。仕事で自分たちが作ったデータがその後どのように活用されているか知らなかったが、有効活用されていることを知ったので、戻ったら仕事への取り組み方が変わるんじゃないかと思う。」(経路検索サービス事業者)
終わりに
OTTOPでは、沖縄県の観光と2次交通情報をオープンデータとして取り扱うことで 公共性の高い情報資産を“地域”のために残していくための データのメンテナンス、利活用促進のためのコミュニティづくりを進めています。
その取組みの一環として、今回のオープンデータ活用ワークショップでは、オープンデータとは何か?可視化をするとは何か?について職種を超えて共有して考える機会となりました。
今回、特別アドバイザーとして運営事務局と参加者に的確なアドバイスをいただきました、伊藤先生、福島さん、本イベントの企画を一緒に考えていただき、進行を務めていただいた石垣さんに感謝いたします。ありがとうございました。
OOLでは、今後もこのような取り組みを継続しオープンデータの普及、利活用について考えていきたいと思います。
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